雨の山形を旅する

2021年10月12日

友人夫妻とわたしたち夫婦の四人で山形を旅した。雨だったが、景色は美しかった。山形美術館は世界的名作を所蔵している。意識よりも先に、目が、一枚の絵に釘付けになった。ゴッホか、と思ったら果たしてその通り。自分の腹に銃弾を撃ち込んだ男の絵だ。腹の中の鉄球をわたしも感じた気がした。

狂気の世界にはゴッホの方が狂気に見えた
狂気の世界にはゴッホの方が狂気に見えた

家族からも、社会からも、教会からも排斥された不遇の人生を、ゴッホは生きた。この絵は家族と比較的仲良く過ごせた短い時間に描かれたものだ。焚き木を集め凍てつく冬に共に立ち向かう家族が描かれている。がっしりと描かれた足元に比べて、上体が華奢に描かれている。この後襲う苦悩に身をひそめるように生きるゴッホの強さと弱さを予見しているかのようだ。日常目にしているものはことごとく虚飾、「本物はこれだぞ。忘れるな。」とゴッホに言われた気がした。

蔵王温泉で
蔵王温泉で

そのあと蔵王温泉に。体の芯から温まり、毒が抜けた。

知人宅に立ち寄る。ご主人は福祉畑を歩いて来た人で、夫婦ともに町内会長や民生員などをしている。子ども食堂を始めたが、やがて大人にも助けが必要と、「みんなの食堂」に改名。市からの依頼で交流サロンも始めた。野良猫の世話をし、人家に近づくイノシシに心を砕き、カラスのことも気にかけている。「世のため人のため」を絵にかいたような老夫婦である。
今採ってきたばかりだ、松茸ご飯、食べていけ、と振舞われた。その香りはわたしが知っているつもりのものとは比較にならない。