体調不調で心を病む

　ＡＣＴでは六つのプロセスで問題を解決しようとします。このすべてを言葉で説明するのは、なかなか難しいことです。そこで、一つのメタファー（たとえ）をお話ししたいと思います。

　あるところに二人の息子を持つ父親がいました。ひとりは秀才で性格も良い子どもでした。もうひとりは不良で問題ばかり起こしていました。
　父親は不良の子どもを更正させなければ家族の幸せはないと思い、不良の子どもに一生懸命関わりました。褒めたり、説教をしたり、一緒に過ごしたり、この子どもを良い子にしようと、それはそれは一生懸命でした。ところが父が頑張れば頑張るほど、その子の欠点が目につくようになり、その子はますます荒れていったのです。
　ところが問題はそれで終わりませんでした。父親がこの子は大丈夫だろうと思っていた秀才の良い子が、次第にやる気を失いやせ衰えていったのです。父親の愛情不足が原因でした。こうして父親は不良の子どもばかりでなく優秀な子供まで失っていったのです。

　どうでしょうか？この父の状況は、あなたの現在の状況とどこか似ていませんか？あなたは後遺症が治らなければ幸せになれないと思っています。そのおかげで、今まで幸せだった部分まで失っていないでしょうか。無くさないで済むものまで無くしてしまっていないでしょうか。

　その父親は、しばらく不良の方はそっとしておき、やせ衰えた子供と人生を楽しむことにしました。しばらくして分かってきたことは、不良の方は兄弟がかわいそうで父親に反発していたということでした。

　あなたの体調の悩みが大きくなるのは、健全な部分までおそろえてきていることのサインなのかもしれません。
　ＡＣＴでは、苦しみを無くす前に、今ある幸せを増やすことに力を注ぎます。そうすれば苦しみは相対的に小さくなり、そのうち本当に気にならなくなります。ですからわたしは当相談室のモットーに「苦しみを受け止め、自己に気づき、価値を目指す」を掲げています。